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無罪主張と被告人の供述調書

 私が注目している美濃加茂市長の収賄事件について、弁護人のブログが事実をそのまま記しているとすると、名古屋地検の検察官は、とんでもない間抜けな書面を作成しているようです。

 弁護人が保釈を求めると、裁判所は検察官に意見を求めます。その意見書の中に、保釈を認めるべきでない理由として、『「供述調書作成にも応じていない」』と記しているそうです。
 この意見のどこが問題か、判りますか?おそらく今の新聞記者には判らないと思います(このブログが7月25日(約1週間前)付けで発表されていますが、どこも食いついていないようですから)。

元ネタは→http://blogos.com/article/91248/


 検察官の仕事は何でしょう?犯罪者を裁判にかけ有罪にすることです。では、犯罪者とはどのような人でしょう?犯罪を犯した人です。ここで注意して欲しいのが、「検察官が犯罪者と睨んだ人」ではないのです。あくまで、「真実」犯罪を犯した人を有罪にするのがその仕事です。当たり前のことですね。

 では、もう一度、検察官の意見の内容を見てみましょう。「供述調書の作成に応じていない」そうでしょうか?この市長さんは、あくまで無罪を主張しています。当然、検察官の意に沿う調書には署名しません。でも、自分の言い分をそのまま調書にしてくれるのであれば、市長さんも調書作成に応じるのではないでしょうか?
 そうです。事実は、検察官が市長さんの供述調書を作成することを拒んでいるのです(前提として、供述調書というのは供述者の言い分を記載した書類です)。
 つまり、真実検察官の言いたいのは、有罪を認める供述調書の作成を拒んでいるということです。これを理由として保釈を認めるべきでないと、検察官は主張しているのです。だんだん、おかしい話が見えてきました。
 検察官の真意は、保釈請求を裁判官に拒否して貰い、拘束を続けることでこの市長さんが根負けして有罪を認めるのを待っているということです(手持ちの証拠で論破できなかったということですね)。
 検察官は、他にも、色々と保釈請求を拒否すべき理由を挙げているのでしょうが、この一行が加わっている以上、市長さんが、弁護人と詳細な打ち合わせをすることに怯えているのだろうと言われても反論できないと思います。本件の客観的証拠はきっちりと詰められているとは思えなくなってきました。

 そもそも、裁判のシステムとは、検察と被告人がお互いの言い分を法廷で闘わせて、そのやりとりの中から裁判官が真実を見つけ出し、有罪無罪を決するというものです。そのような裁判において、徹頭徹尾無罪を主張する被告人に対しては、法廷で、その言い分に対して、証拠を突きつけて論破するのが検察官の仕事です。

 被告人が検察官の都合の良い調書を作成しないからといって、「保釈を拒否すべき理由」として書面化する検察官のセンスを疑うと共に、このような意見書を読んで、保釈を認めない裁判官もセンスないと言わざるを得ないと思います。

 証拠を集めきれなかったから、家族や仕事と切り離して、精神的に追い詰めれば、何とか自白に持っていけるだろうという発想が見え隠れします。これで、良いのでしょうか?

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河原 誠Makoto Kawahara

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  • 大阪家庭裁判所 家事調停委員 (堺支部担当)
  • 法務省法制局 大阪少年鑑別所視察委員会(2021年4月~2024年3月)
経歴
  • 1986年(昭和61年) 関西大学法学部卒業
  • 1993年(平成5年) 司法試験合格
  • 1994年(平成6年) 最高裁判所司法研修所
  • 1996年(平成8年) 弁護士登録(修習48期)。木村法律事務所就職
  • 2002年(平成14年) 事務所設立

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